1956年 一次 文科 [1]

下の (1) から (6) までの各場合に
a>ba^n>b^n とが
つねに同時に成り立つならばイ,
同時に成り立つこともあり, 成り立たないこともあるならばロ,
決して同時に成り立つことがないならばハ
と, 答案用紙の数字のわくの該当する番号の解答欄に記入せよ。
(1) n が正の偶数で, a>0, b>0 の場合
(2) n が正の偶数で, a>0, b<0 の場合
(3) n が正の偶数で, a<0, b<0 の場合
(4) n が正の奇数で, a>0, b>0 の場合
(5) n が正の奇数で, a>0, b<0 の場合
(6) n が正の奇数で, a<0, b<0 の場合



問題の意味が分かりにくいですが, 要するに
a>b \Leftrightarrow a^n>b^n のときにイ,
a>b \Leftrightarrow a^n \leq b^n または同じことですが a \leq b \Leftrightarrow a^n>b^n のときにハ,
どちらでもないときにロを記入せよ, ということのようです.
大小関係を考える際には, 次の事実が大切です.
A>B \Leftrightarrow A-B>0
このことは A, B の符号によらず成り立ちますし, 因数分解に持ち込めることも多いので実は非常に有用です.


a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1})



a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1} は, a, b がともに正ならば正です.
a, b がともに負ならば, n が偶数のときは各項が奇数個の負の数の積となり負なので全体として負, n が奇数のときは各項が偶数個の負の数の積となり正なので全体として正です.
a, b の符号が異なる場合には同様に考えることができないので, 以下では個別に対応します.


(1)
a>0, b>0 のとき, a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1}>0
よって, a>b ならば a-b>0 であることとあわせて a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1})>0 より a^n>b^n
逆に a^n>b^n のとき a^n-b^n>0 より a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1})>0
ここで, a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1}>0 であるから a-b>0 となり a>b
以上によりイ.


(2)
例えば n=2 として
a=3, b=-1 のとき a>b かつ a^n>b^n
であるが
a=2, b=-5 のとき a>b かつ [tex:a^nb] ならば a-b>0 であることとあわせて a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1})<0 より [tex:a^nb^n] のとき a^n-b^n>0 より a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1})>0
ここで, a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots +ab^{n-2}+b^{n-1}<0 であるから a-b<0 となり [tex:a0], b<0 より a>b
また, n は奇数なので a^n>0, b^n<0
よって a^n>b^n
以上によりイ.


(6)
(1) と同様に考えてイ.