じゃんけんの心理戦

手の数が偶数種類のじゃんけんは上手いように定義できない、という話を前にしました。
例えば、AがBに勝つことをA→Bで表すことにすると、手の数が4種類のじゃんけんは

のようになります。
この図では、AはBとCに、BはCとDに勝ちますが、CはDにだけ、DはAにだけ勝つことができます。
したがって、でたらめに手を出すと、AとBの方がCとDよりも勝ちやすいのです。
手の数が偶数種類あると、どうしてもこのように勝ちやすさに差が出てしまうのでした。
ただ、こういった状況も、考え様によっては面白くもあります。
AとBが勝ちやすいことが分かっているのならば、AかBだけを出せばいいじゃん、なんて思う人もいるかもしれません。
確かに、相手がでたらめに手を出すならば、そのようにすれば勝率は高まります。
では、相手も同じように考えていて、AかBだけしか出さないとするとどうか?
この場合、AはBに勝つことができるので、Aだけを出していれば勝率は上がりそうです。
しかし、さらに相手も同じように考えていて、Aだけを出すのならば、決着がつきません。
困りましたね。
そこで、そうなることを見越し、あえて普段なら負ける率の高いDを出すと、勝てます。
ところが、今度はそうなることを見越し、Dに勝つことができるBまたはCを出そうと考える人も現れてくるかもしれません。
…などと考えていくと、堂々巡り。きりがありません。
ここで議論した「勝率」というのは、あくまで各手の出る確率が等しい場合にのみ言えることなのであって、人間の心理が絡んでくると、単純に確率を考えることができなくなってしまうのです。
こうしたことを数学的に扱うのがゲーム理論と呼ばれる分野で、映画「ビューティフル・マインド」で有名になったジョン・ナッシュという人が貢献しています。
ゲーム理論はじゃんけんに限らず、経済学などの分野にも応用されているようです。