約数の総積

1970年の東大数学の問題を解いていたら, 約数の総積に関するものがありました。
総積というと明治時代の文豪の名前のようで聞きなれないようで何なのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが, 要するに全ての約数を掛け算した値のことですぷ。
ちょっと公式を作ってみたら面白かったので紹介します。
随分と久しぶりに, 問題の解説でない記事ですね。


まずは次のような例を考えてみます。
360=2^3*3^2*5^1
これの約数の個数はそれぞれの指数部に 1 を足したものの積で
(3+1)(2+1)(1+1)=24 通り
というのは教科書にある知識で分かります。
総和については
(2^0+2^1+2^2+2^3)(3^0+3^1+3^2)(5^0+5^1)=990 通り
ですね。
じゃあ総積はどうなるか。
約数は全て 2^x*3^y*5^z の形をしていて, 例えば 2^x を固定して考えてみると, それに対して 3 と 5 の指数部の組み合わせが (2+1)(1+1) 通りあるわけです。
これらを全部掛けあわせればいいわけですから, 総積を素因数分解したときに出てくる 2 の累乗は
\left(2^0\right)^{(2+1)(1+1)}*\left(2^1\right)^{(2+1)(1+1)}*\left(2^2\right)^{(2+1)(1+1)}=\left(2^{0+1+2}\right)^{(2+1)(1+1)}
の形になっています。
3 と 5 についても考え方は同じです。
一般に, 自然数 n素因数分解して
n=p_1^{q_1}*p_2^{q_2}*\cdots*p_m^{q_m}
の形になったとすると, 総積を素因数分解したときに出てくる p_i の累乗は
\left(p_i^{\frac{q_i(q_i+1)}{2}}\right)^{\frac{(q_1+1)(q_2+1)\cdots(q_m+1)}{q_i+1}}
の形になっています。
q_i+1 は約分できますね。
したがって, n の総積は
\left\{\displaystyle \prod_{i=1}^m \left(p_i^{\frac{q_i}{2}}\right)\right}^{\left(\displaystyle  \prod_{i=1}^m (q_i+1) \right)}
=n^{\displaystyle  \frac{1}{2} \prod_{i=1}^m (q_i+1)}
となります!
要するに, 自然数 n の約数の総積は, n の(約数の個数/2)乗だというわけです。
n が平方数ならばこの式の値が整数になることは明らかですが, じゃあ平方数でないならばどうなるかというと, その場合は奇数の指数があるはずなので, それに 1 を足して偶数になって 2 で割り切れるからやはり整数になることが分かります。
なかなか面白いですね。


ちゃんちゃん。