じゃんけんの拡張の可能性

少し前から、じゃんけんの拡張の可能性について考えていました。
具体的に言うと、手がグー、チョキー、パーの3種類ではなく、一般にr種類あるようなじゃんけんを上手いように作ることは可能なのかどうか、ということです。

AがBに勝つことをA→Bで表すことにすると、普通のじゃんけんは次のようなグラフで表すことができます。

この矢印を反転させれば、新しいじゃんけんが定義できますね。
しかし、それ以外の可能性はありません。
したがって、手が3種類の場合には、じゃんけんは2通り定義できることが分かります。

では、手を4つにした場合にはどうか。
この問題について考える前に、まずはじゃんけんの満たすべき条件を考える必要があります。

条件1.任意の二つの手の間に強弱が定義されている。
条件2.同じ手の強さは同じとする。
条件3.各手について、それが勝てる手、負ける手の数は他の手と同じ(要するに、手によって勝ちやすい、負けやすいの差が生じない、ということ)。

手が4種類ある場合には、グラフは例えば次のようになります。

このグラフをじっと見ていると分かるのですが、手が4種類ある場合には、どうしたって条件3を満たすことはできません。
上の条件1〜3が満たされていると仮定し、矛盾を導くことでこのことを証明します。

各手について、他の手は3種類あるので、その手が勝てる手の数と負ける手の数は一致しません。
勝てる手の数の方が多いとすると、条件3により、他の手についても同じことが言えます。
ところが、各矢印について、始点が勝ち、終点が負けるということは、勝てる手の総和と負ける手の総和は一致することになり、これは矛盾です。
負ける手の数の方が多いとしても同様。
証明終わり。

この証明は、手が2n種類の全ての場合に適用できます。
つまり、手が2n種類あるようなじゃんけんは上手いように定義できない、ということが言えます。

手が2n+1種類の場合はどうでしょうか。
3種類の場合は上手くいきました。では、5種類では?

5種類では、上手くいきます。
図は面倒なので描きませんが、適当な行列を書いてぐりぐりやった結果、条件を満たすじゃんけんが24種類あることが確かめられました。

そして、疑問が起こりました。
手が2n+1種類ならば必ず上手いようにじゃんけんを定義できるのか。
定義できるとすれば、それは何種類あるのか。
この問題には、しばし悩みました。

3種類のとき2種類、5種類のとき24種類。
3→2
5→24
さっぱり規則性が分かりません。
しかしながら、手の種類が3から5に上がるだけでこの増加量なので、手の種類が7の場合についても確かめる気は起きません。
そこで、プログラムでも書いて検証しようかと思った矢先、ふと、気付きました。
3→2=2!=(3-1)!
5→24=4!=(5-1)!
おお。何と素晴らしい。
それならば、
7→(7-1)!
なのではなかろうか。

というわけで、手が2n+1種類の場合には、じゃんけんの種類は(2n)!通りあるのではないか、という予想が立ちました。

しかし、この証明がなかなか難しいのです。
最初は、オイラーの一筆書きの定理を使って証明できた!と思ったのですが、あとで間違いが見つかりました。
その上、とりあえずプログラムを書いて検証してみたところ、手が7種類の場合には2640通り、という答えが出ました。
あらあら。
予想が間違っているのか、プログラムが間違っているのか、その両方か。
多分、予想が間違っています。
困りました。