宇宙イモムシの大冒険
かなり久しぶりの更新です。
次のような問題を考えてみましょ。
【問題】
勇敢な宇宙イモムシが宇宙を横断しようと決意しました。
宇宙には果てがあり、直径は 465 億光年、大体 メートルあります。
宇宙イモムシは、その端っこにいます。
また、宇宙は 137 億年ごとに、465億光年ずつ一様に膨張するものとします(137 億年経ったら、いきなり瞬時に 465 億光年膨張するという設定)。
対して、宇宙イモムシはとてもノンビリ屋さんで、137 億年ごとに 4.65 センチ、つまり メートルしか進むことができません。
さあ、この宇宙イモムシは、宇宙を横断することができるのでしょうかっ!
直感的に考えると、どう考えても無理そうです。
しかし、「宇宙が一様に膨張している」というのがポイントなのです。
簡単のため、137 億年を 1 単位時間とします。
最初の 1 単位時間で宇宙イモムシは全体の を横断したことになります。
すると、直後に宇宙は膨張するわけですが、一様に膨張するので、宇宙イモムシが横断した割合は保持されることになります。
次の 1 単位時間では、2 倍の大きさになった宇宙の中を同じ速さで移動するので、さらに全体の だけ横断することになります。
まとめると、n 単位時間に宇宙イモムシが宇宙を横断する割合は
です。
これが 1 になったとき、宇宙イモムシは宇宙を横断し切った、ということになりますね。
ところで、 は のときに調和級数と呼ばれ、直感に反して発散することが知られています。
このことは、
であり、右辺が無限大に発散することから明らかですね。
というわけで、n 単位時間に宇宙イモムシが横断する割合
もまた発散し、したがっていつかは 1 を超える、つまり宇宙イモムシは宇宙を横断することができる、という結論が得られます。
めでたし、めでたし。
ちなみに、膨張が一様でなく、宇宙イモムシがいるのと反対側の端っこだけがビュイーンと伸びるのであれば、宇宙イモムシが宇宙を横断することはできません。
一様に膨張することによってそれまでに横断した割合が保持されることがキーだったわけです。
さて。
実際に、横断するのにどれだけ時間がかかるのかを考えてみましょ。
オイラーさんは次のような等式を発見してくれました。
ここで、 は 1 より小さい正の定数で、 は で 0 に収束する正の数です。
それから、 はもちろん、自然対数です。
この等式を使うと、横断にかかる時間 n について考えたとき、
より
となって、 と は に比べると無視できるくらい小さいので無視すると
ここで、 なので
よって、n は 桁の数(☆)です。
えー。
というと
10000000000000000000000000000
です。
おっきーですね。
しかし!
☆は、桁数がこの数なのです。桁数が 10000000000000000000000000000。
想像を絶します。
どれくらい大きいのか、大雑把に確認してみましょう。
1秒に1万文字を印刷できるプリンターを使ったとすると、1年間に 文字を印刷できますが、
これが全体に占める割合は です。
したがって、印刷するだけで少なくとも 年かかる数、です。
印刷するだけで!
そして、そのような数(☆)分だけの単位年数が、横断にかかるというわけです!!!
…自分の語彙力では、その大きさを上手く言葉にすることができません。ああ。
ちなみに、1 単位年が 137 億年なので、☆*13700000000 が、横断にかかる本当の年数です。
ただ、☆に比べると 13700000000 はあまりに小さいので、誤差の範囲と言えるかもしれません。
結論。
勇敢な宇宙イモムシは宇宙を横断することができるが、そのためには想像を絶する忍耐力が必要である。