1957年 二次 解析2 [2]

水を満たした半径 r の球状の容器の最下端に小さな穴をあける。水が流れ始めた時刻を 0 として時刻 0 から時刻 t までに, この穴を通って流出した水の量を f(t), 時刻 t における穴から水面までの高さを y としたとき, f(t)導関数 f'(t)y との間に
f'(t)=\alpha\sqrt{y}\alpha は正の定数)
という関係があると仮定する(ただし, 水面はつねに水平に保たれているものとする)。水面の降下する速さが最小となるのは, y がどのような値をとるときであるか, また水が流れ始めてからこのときまでに要する時間を求めよ。



数学力のみならず国語力も試される問題です.
時刻 t から時刻 t+h までに流出する水の量は f(t+h)-f(t) なので, その間の水が流出する速さの平均は \frac{f(t+h)-f(t)}{h} です.
h\rightarrow0 とするとこれは f(t)導関数 f'(t) に他ならず, 時刻 t における水が流出する速さになります.
では, f'(t)=\alpha\sqrt{y} より, 水が流出する速さが最小となるのは y=0 のときとなりますが, これは答えとして不適切です.
何故なら「水が流出する速さ」≠「水面の降下する速さ」だからです.
例えば, 水が流出する速さが大きくとも, 球状の容器の中心付近では水面の降下する速さが小さくなることも考えられます.
この問題で求めるべき y の値は, \left|\frac{dy}{dt}\right| が最小となる時刻でのものです.
ここで何故絶対値が付いているのかというと, y は時刻とともに減少するので, \frac{dy}{dt} に時刻を代入した値は常に負となるからです.
この場合の「水面の降下する速さ」とは運動の向きを考えない \left|\frac{dy}{dt}\right| のことだと考えられます.
したがって, これが最小となる y の値は, その符号から, \frac{dy}{dt} が最大となる時刻での値です.



とりあえず, f(t) を計算で求めてみます.
できるところからコツコツと!


座標平面上に原点中心で半径 r の円をかき, 円の最下端から上に y のところまで水があると考えると
f(t)=\pi\int_{-r+y}^r\sqrt{r^2-y^2}^2 dy=\frac{\pi}{3}(y^3-3ry^2+4r^3)



次に f(t)t微分しますが, y もまた t の関数なので, 合成関数の微分になります.


f'(t)=\frac{d}{dy}\left\{\frac{\pi}{3}(y^3-3ry^2+4r^3)\right\}\cdot\frac{dy}{dt}=\pi(y^2-2ry)\cdot\frac{dy}{dt}
ここで, f'(t)=\alpha\sqrt{y} であるから
\frac{dy}{dt}=\frac{\alpha\sqrt{y}}{\pi(y^2-2ry)}=\frac{\alpha}{\pi(y^{\frac{3}{2}}-2ry^{\frac{1}{2}})


g(y)=y^{\frac{3}{2}}-2ry^{\frac{1}{2}} とおくと
g'(y)=\frac{1}{\sqrt{y}}\left(\frac{3}{2}y-r\right)
よって, 増減表(省略)より, g(y)y=\frac{2}{3}r で最小となる.
このとき, \frac{dy}{dt} (<0) は最大となるので, 水面の降下する速さが最小となるのは y=\frac{2}{3}r のときである.



y が分かったので, 次は t を求めます.
そのためには yt の関係が分かればよいので, \frac{dt}{dy} を利用します.


\frac{dt}{dy}=\frac{1}{\frac{dy}{dt}}=\frac{\pi}{\alpha}(y^{\frac{3}{2}}-2ry^{\frac{1}{2}}) より
t=\int\frac{\pi}{\alpha}(y^{\frac{3}{2}}-2ry^{\frac{1}{2}})dy=\frac{\pi}{\alpha}\left(\frac{2}{5}y^{\frac{5}{2}}-\frac{4r}{3}y^{\frac{3}{2}}\right)+C
t=0 のとき y=2r であるから, これを代入して整理すると
C=\frac{\pi}{\alpha}\cdot\frac{16\sqrt{2}}{15}r^{\frac{5}{2}}
よって,
t=\frac{\pi}{\alpha}\left\{y^{\frac{3}{2}}\left(\frac{2}{5}y-\frac{4}{3}r\right)+\frac{16\sqrt{2}}{15}r^{\frac{5}{2}}\right\}
これに y=\frac{2}{3}r を代入して整理すると
t=\frac{16\sqrt{2}\pi r^{\frac{5}{2}}}{135\alpha}(9-2\sqrt{3})