酒持って来い

確か小学生の頃だったと思うのですが、ある昔話を本で読みました。
その話の中にはどうしようもない貧乏の飲んだくれの男がいて、ひょんなことから善い行いをし、その褒美として美女に扮した神様だかに、いくらでも酒が出てくるとっくりをもらったのでした。
ただし、そのとっくりを使い続けるための条件として、美女は次の二つを守るように男に言いました。
一つ目は、決して酒を飲み干さないこと。
二つ目は、とっくりを裏返して底を叩いたりしないこと。
この二つの条件を守れば、毎朝、目が覚めたときに、とっくりの中には酒が満たされた状態になっている、というわけなのでした。
ところが、ろくでなしの男は美女の言いつけを破り、酒を飲みほした挙句、とっくりを裏返して底を叩いてしまいました。
それからというもの、とっくりはただのとっくりになり、男は元の貧乏暮らしに戻ってしまったのでした。
ちゃんちゃん。
…これがその昔話の概要なのですが、この話を読んだイガ(ラシ)少年はしばし考え込んでしまいました。
もし、二つの条件のうち一つだけ破ってしまった場合には、とっくりはどうなるのか。
…いくら考えても答えが出ませんでした。
二つの条件はおそらくは十分条件ですが、必要十分条件なのかどうかが問題なわけです。
もちろん、当時のイガ(ラシ)少年はそのような概念は知るよしもなかったのですが、当時から、物事を論理的に考える習慣はできていたようです。