n次元球の体積と表面積の最大値だぽよ。

前回の復習.


半径が rn 次元球の超体積は
V_n(r) = \frac{2^{\lceil \frac{n}{2} \rceil}}{n!!}\pi^{\lfloor \frac{n}{2} \rfloor} r^n
だぽよ.
超表面積(便宜上、そう呼ぶ)は
S_n(r) = \frac{2^{\lceil \frac{n}{2} \rceil}}{(n-2)!!}\pi^{\lfloor \frac{n}{2} \rfloor} r^{n-1}
だぽよ.


ここで, \lceil x \rceilx 以上の最小の整数, \lfloor x \rfloorx 以下の最大の整数を表すでごんす.
あと, n!! = n(n-2)(n-4)\cdots でごわす.

n V_n(r) S_n(r)
1 2 r 2
2 \pi r^2 2\pi r
3 \frac{4}{3}\pi r^3 4\pi r^2
4 \frac{1}{2}\pi^2 r^4 2\pi^2 r^3
5 \frac{8}{15}\pi^2 r^5 \frac{8}{3}\pi^2 r^4
6 \frac{1}{6}\pi^3 r^6 \pi^3 r^5
7 \frac{16}{105}\pi^3 r^7 \frac{16}{15}\pi^3 r^6
8 \frac{1}{24}\pi^4 r^8 \frac{1}{3}\pi^4 r^7
9 \frac{32}{945}\pi^4 r^9 \frac{32}{105}\pi^4 r^8
10 \frac{1}{120}\pi^5 r^{10} \frac{1}{12}\pi^5 r^9


なかなか壮観ですねっ!


これらをよく見てみると, 途中までは増加するものの, そこからどんどん小さくなっていき, 0 に収束してしまうんでないべか, という疑念が起こります.
検証してみっぺ.


n が偶数の場合と奇数の場合を一緒にやろうとすると式がシッチャカメッチャーカになるので, 別々に考えてみるべよ.
それから, 一般の r について考察すると面倒なので r=1 として, V_n(1)S_n(1) を, それぞれ v_n, s_n で表すことにするべ.
一般の r についてもやり方は同様だべ.


\frac{V_{2(m+1)}(r)}{V_{2m}(r)} = \frac{2^{m+1} \pi^{m+1} r^{2(m+1)}}{\{(2(m+1)\}!!} \times \frac{(2m)!!}{2^m \pi^m r^{2m}} = \frac{\pi}{m+1}r^2
というわけで, r=1 のとき,
m \leq 2 なら上式は >1,
m > 2 なら上式は <1.
したがって, 偶数次元の場合は v_nn = 2(2+1) = 6 で最大値 \frac{1}{6} \pi^3 をとる.
また,
\frac{V_{2m+1}(r)}{V_{2(m-1)+1}} = \frac{2^{m+1} \pi^m r^{2m+1}}{(2m+1)!!} \times \frac{(2m-1)!!}{2^m \pi^{m-1} r^{2m-1}} = \frac{2\pi}{2m+1} r^2
というわけで, r=1 のとき,
m \leq 2 なら上式は >1,
m > 2 なら上式は <1.
したがって, 奇数次元の場合は v_nn = 2 \cdot 2+1 = 5 で最大値 \frac{8}{15} \pi^2 をとる.
ここで, v_5 - v_6 = \frac{1}{30}\pi^2(16-5\pi) > 0.
以上により, v_nn=5 のときに最大値 \frac{1}{6} \pi^3 をとる.
次に, 収束について.
前回の結果より, v_{2m} = \frac{\pi^m}{m!} なので
0 < v_{6+2i} = v_6 \times \frac{\pi}{4} \times \frac{\pi}{5} \times \cdots \times \frac{\pi}{i+3} \leq v_6 \left(\frac{\pi}{4}\right)^{i}
\lim_{i \rightarrow \infty} v_6 \left(\frac{\pi}{4}\right)^i = 0 なので, はさみうちの原理により \lim_{i \rightarrow \infty} v_{6+2i} = 0.
奇数次の場合も同様.
以上により, v_n0 に収束する.
超表面積についても同様に, s_nn = 7 で最大値 \frac{16}{15}\pi^3 をとり, 0 に収束することが分かる.
めでたし.


超体積が 0 に収束するのは何だか不思議な感じがしますが, 超体積自体が「小さく」なっていくわけではありません.
V_n(r) の値は一辺の長さが 1n 次元立方体の超体積に対する比だと考えると, 球を立方体に入れたときの「隙間」がどんどん大きくなっていく, という意味になるのです.
ちなみに, 計算によると, 例えば半径 1 の球の超体積が立方体のそれより小さくなるのは n = 13 からのようで, 想像を絶する世界です.
高次元の時空を扱う超弦理論と絡んでくると面白そうですね!