n重根号
n 重根号という言葉が正式なものとして数学の世界で広く認められているかは私の窺い知るところではないのですが, 2 重根号という言葉は入学試験, 入社試験の問題などでしばしば見かけます.
例えば, 次のようなものがあります.
次の 2 重根号をはずしてね♡
これは
という風に解きます.
んだらば, 2 重じゃなくて 3 重とか 4 重, はては 100 重とか, 任意の n について n 重根号の問題は作れるんだっぺか.
そう考えて, 検証してみました.
まず, n 重根号をちゃんと定義します.
数列 に対し, n重根号 を次のように帰納的に定義する.
そうすると
といった感じです.
というわけで, 問題を定式化すると,
任意の正整数 n(> 1), s, t に対し, ある正整数の列 が存在して
となるようにできるか?
ということになります.
各 は正整数でなくても良いかもしれませんが, 正整数の方が問題としては自然なので.
ちなみに, n = 2 の場合は自明で, , とおけば済みます.
以下では を仮定して話を進めます.
さて, にはルートが n 個もついているので, というような形か, それに近いものであれば良さそうです.
色々と実験してみたところ, とすると上手くいくことが分かりました.
さらに, です.
ただし, ここでは という前提付きです.
非常に天下り的ですねっ.
ここで, です.
ここで, です.
以下、同様にして
ここで, です.
そして,
ここで, です.
ここまで s-1 を展開の度に外に出していましたが, これには理由があります.
s-1 の代わりに s を使うと, s = t だった場合, 最後のところで
となってしまい, これでは仮定に反します.
それから, というのは, となるために必要なのでした.
さて, これで の場合の証明は終わりました.
次に, の場合について.
こちらの方が簡単です.
上の計算式の s-1 と s を全て 1 に直します.
ここで, です.
ここで, です.
以下, 全く同じで,
となります.
さて, これで の場合と の場合の証明は終わりました.
ということは, 残るは の場合なのですが, これは次のようにしてあり得ないことが分かります.
n = 2 の場合は
となって大丈夫なのですが, のとき,
より となっていることが必要です。
ここから
.…(*)
ここで, を示します。
任意の i について が最小になるのは のときで
, .
のとき .
よって なら .
今, なので .
さて, は整数なので (*) より も整数です.
さらに, 帰納的に考えて は正です。
すると, の取りうる値は が正整数であることと (*) より 1, 2, 3 のいずれかです.
ところが より となり, いずれも条件を満たしません.
ゆえに, のとき, (*) を満たす は存在しないことが分かります.
以上により, 命題の修正バージョンは次のようになります.
任意の正整数 n(> 1), s, t に対し, なら, ある正整数の列 が存在して
となるようにできる.
めでたし.