グリコ

グリコというゲームがあります。


二人が階段でじゃんけんをして、勝った方は出した手がグーなら「グリコ」で 3 歩、チョキなら「チョコレート」で 6 歩、パーなら「パイナップル」で 6 歩進めます。
先に階段を登り切った方が勝ちです。


実は、このゲームには最適な戦略が存在します。
今回は、このゲームをさらに一般化したゲームについて、その最適な戦略を示してみたいと思います。


「問題」
二人が階段でじゃんけんをして、勝った方は出した手がグーなら l 歩、チョキなら m 歩、パーなら n 歩進める。
相手がグー、チョキ、パー、それぞれの手を出す確率がどのようであっても、各じゃんけんにおいて「こちらの進む歩数から相手の進む歩数を引いた値」の期待値を 0 以上にできるような、こちらが手を出す確率 p, q, r の条件を求めよ。


この期待値が 0 以上であれば、こちらの勝率が相手以上、ということになりますね。
では、期待値をどのようにして求めるか。
相手がグー、チョキ、パー、それぞれの手を出す確率が a, b, c であるとします。
ここで、例えば、こちらが確率 p でグーを出したとき、
相手が確率 a でグーを出してきたなら引き分けで、
相手が確率 b でチョキを出してきたならこちらの勝ちで、l 歩進むことができますが、
相手が確率 c でパーを出してきたなら相手の勝ちで、相手に n 歩進まれてしまいます。
これをもとにして計算式を立てると


期待値 E = p(bl-cn)+q(cm-al)+r(an-bm) = a(rn-ql)+b(pl-rm)+c(qm-pn)
このとき、E >= 0 が成り立つには


rn-ql >= 0 …(1)
pl-rm >= 0 …(2)
qm-pn >= 0 …(3)


となることが必要十分です。
十分性は明らかですね。
必要性は (a,b,c) に (1,0,0), (0,1,0), (0,0,1) を代入した式から確認できます。


(1)*m より rmn-qlm >= 0
(2)*n より pln-rmn >= 0
よって
qlm <= rmn <= pln
qm <= rmn/l <= pn …(4)
ここで、(3) より
qm >= pn
であるから (4) と合わせて
qm = rmn/l = pn
q/n = r/l = p/m
したがって
p : q : r = m : n : l
となることが E>=0 となるための必要十分条件


できました!


グー、チョキ、パーでの進める歩数が l, m, n なのに、期待値を 0 以上にする確率の比が m : n : l と、1 つずれていますね。不思議ー。
ちなみに、l, m, n が 3, 5, 6 の場合について、東京大学が1992年に入試問題として取り上げています!


たかが子供の遊びと言えども、なかなか難しい数学の話に発展することがあるものですね。