共終数 その2
最近, 集合論の勉強に熱中しています.
上手い定義は豊かな数学の世界を生み出すということを実感し, 感動しています.
今回は共終数についての基本的な補題やら定理の証明を載せておきます.
補題
極限順序数 について
(i) かつ ならば の順序型は 以上.
(ii) を非減少関数とし, ならば .
証明
(i) の順序型を とすると, から への全単射が存在し, これは明らかに から への共終関数なので, .
(ii) まず, を示します.
から への共終関数と を合成すると, 非減少関数 で, となるようなものが得られます.
の値域から増加列を取ってきて, その各々の要素 について, となる最小の を選び, それら全体の集合を とおくと, から への共終関数が得られます.
よって, .
次に, を示します.
共終関数 と各 に対して, となる最小の を選び, それら全体からなる集合を とおくと, から への共終関数が得られます.
よって, .
無限基数 は, のとき正則(regular)基数, そうでないとき特異(singular)基数と呼ばれますよ.
補題
任意の無限基数 について, は正則基数ですよ.
証明
が基数でないとすると, ある について から への全単射が得られ, したがって から への共終関数が得られるが, これは共終数の最小性に矛盾.
また, 先日の記事中の補題により .
極限順序数 について, は のとき有界(bounded), のとき非有界(unbounded)であるといいますよ.
補題
無限基数 について
(i) かつ ならば は有界.
(ii) かつ ならば の値域は有界.
証明
(i) と仮定し, の順序型を をおきます.
上の補題 (i) より (非有界) ならば .
対偶をとると, ならば は有界.
したがって, 証明すべきは ならば となることです.
これが成り立つことは であることから明らか.
(ii) とおくと, で, なので, あとは (i) を適用する.
を正則基数とすると, その非有界な部分集合 は上の補題 (i) により となるので となります.
つまり, 正則基数の任意の非有界な部分集合の濃度は, その正則基数に等しいのであります.
これ, とても大事.
それから, 任意の基数に対し, それより大きな特異基数が存在が言えます.
順序数 に対し, なので は特異基数です.
ちなみに, 選択公理を使うと が正則基数であることを証明できるそうです.
補題
無限基数 が特異であることの必要充分条件は, 濃度が 未満の の部分集合を ( は基数)個集めて, それらの和集合が と等しくなるようにできること.
また, この条件を満たす最小の は でございます.
証明
条件の集合を とおきます.
ここで, で, 各 について かつ です.
(i) 充分条件.
を特異基数とし, 共終関数 を考えます.
各 について とおけば, であることにより, この が上の です.
(ii) 必要条件.
を, 条件を満たす最小のものとします.
各 に対し, を の順序型とします.
この列が非減少であることは明らかで, の最小性から, です.
が特異基数であることを証明するには であることを示せばよいので, を示せばよいわけです( なので).
つまり, から への共終関数が存在することが言えればよいのです.
そのためには, とおき, これが に等しいことを示せばヨロシ.
まず, から への関数 で, について となるものを考えます.
ここで, は を満たす最小のもので, は の順序型とします.
( から への単射を作りたいのですが, 上の のみを考えたときに, 例えば , とすると, それぞれ となってしまい, 単射ではあり得なくなってしまうわけです. しかし, と対にするとこのようなことは起こりません.)
このとき, は単射となり, .
一方で, , でありことにより .
したがって です.
定理
無限基数 について .
証明
から への任意の写像が全射でないことを見ればよいのです.
から へのある写像の値域として, を考えます.
このとき, ある が存在して, であることを示します.
共終関数 を考えます.
(この は, から全ての への対応を与えるために必要なのです.)
各 について を任意の に対して なる最小の とします.
このような が存在することは, であることから分かります.
任意の に対してある が存在して となるので, この が望むものです.
次回は, 到達不可能基数について書きたいと思います.