斜め45度

唐突ですが、二次関数のグラフ、例えばy=x^2のグラフは、次のようになります。

このことを知った、当時中学三年生の私は、このグラフを右に90度傾けたグラフを表す関数はどんなものだろうかと考えました。
答えは単純で、x 軸と y 軸を入れ替えればよいのですから、
x=y^2
つまり
y=\pm \sqrt{x}
になります。
このとき、グラフは次のようになります。

(プラスとマイナスの場合があるので、厳密には関数が2つです。)
さて、私はさらに考えを進めて、二次関数のグラフを斜めに傾けたグラフを表す関数はどんなものだろうかと考えました。
しかし、何日間も考えた末、結局答えは見つかりませんでした。
今日は、当時の私に答えを与えたいと思います。
ポイントは、極座標表示です。
座標平面上の任意の点 (x,y) は、適当な実数 r\alpha を用いて
x=r \cos \alpha
y=r \sin \alpha
と表すことができます。
また、この点を、原点を中心として正の方向に \beta だけ回転させた点 (X,Y) の座標は
X=r \cos(\alpha+\beta)
Y=r \sin(\alpha+\beta)
と表すことができます。
加法定理を使って変形すると
X=r(\cos \alpha \cos \beta-\sin \alpha \sin \beta)
Y=r(\sin \alpha \cos \beta+\cos \alpha \sin \beta)
です。
ここで、x=r \cos \alpha, y=r \sin \alphaを代入すると
X=x \cos \beta-y \sin \beta
Y=x \sin \beta+y \cos \beta
が得られます。
今、y=ax^2 のグラフを傾けたもの、つまり正の方向に \beta だけ回転させたグラフを構成したいので、y=ax^2 を上式に代入すると
X=x \cos \beta-ax^2 \sin \beta
Y=x \sin \beta+ax^2 \cos \beta
となります。
これは、x を変数としたグラフの媒介変数表示と見なせます。
というわけで、まずは一つ目の式を変形すると
(a \sin \beta)x^2-(\cos \beta)x+X=0
となることから、この x についての二次方程式の解は
x=\frac{\cos \beta \pm \sqrt{\cos^2 \beta-4aX \sin \beta}}{2a \sin \beta}
であり、これを二つ目の式に代入すると
Y=\sin \beta \left(\frac{\cos \beta \pm \sqrt{\cos^2 \beta-4aX \sin \beta}}{2a \sin \beta} \right)+a \cos \beta \left(\frac{\cos \beta \pm \sqrt{\cos^2 \beta-4aX \sin \beta}}{2a \sin \beta} \right)^2
となります。
そこで、X,Y,\beta を改めて x,y,\alpha と置き換えると
y=\sin \alpha \left(\frac{\cos \alpha \pm \sqrt{\cos^2 \alpha-(4a \sin \alpha)x}}{2a \sin \alpha} \right)+a \cos \alpha \left(\frac{\cos \alpha \pm \sqrt{\cos^2 \alpha-(4a \sin \alpha)x}}{2a \sin \alpha} \right)^2
という式が出来上がります。
これが、y=ax^2 のグラフを正の方向に \alpha だけ傾けたグラフを表す(2つの)関数です。
実際、y=x^2 のグラフを正の方向に45度傾けたグラフをかいてみると、次のようになります。

めでたし。
それにしても、グラフを少し傾けるだけなのに、ここまで話がややこしくなってしまうものなのですね。
中学生の私が解けないわけです。
でも、解けない問題を解けないなりにも一生懸命に解こうとすることは、大切なことだと思います。
そこで考えたことが、何か新しいことを理解したり生み出したりするための原動力になります。
ちなみに、放物線の位置や、どれだけ回転させるかを考慮しなくてもよいのならば、放物線のグラフを傾けたグラフは
y=ax+b \pm \sqrt{cx+d}
という式で表すことができるようです。
実は、この式は当時中学三年生だった私が予想したものでもあります。
これが上の複雑な式も含むことの証明は、少し面倒ですが頑張ればできそうです。
それから、上の複雑な式は y=ax^2 のグラフを傾けたものですが、平行移動したものはどうなるでしょうか。
次回は、そのことについて書いてみたいと思います。