いつまで反発するんですか

適当な高さから床に落としたボールは床で跳ね返るわけですが, そこでまた適当な高さまで跳ね上がってまた落ちて、の繰り返し.
果たしてボールは永遠に跳ね返り続けるのか, いつかは停止してしまうのかっ!
ということで, 計算してみたよ.


ボールを落とす高さを h = h_1 , 重力定数g, 反発係数を e(0 < e < 1) とします.
また, 簡単のため, 空気抵抗やら諸々の余計なものは無視します.


跳ね返る直前のボールの速さを v_1, 跳ね返った直後のボールの速さを v_2 とおくと
v_1^2 = 2gh_1 より v_1 = \sqrt{2gh_1}.
\frac{v_2}{v_1} = e より v_2 = e v_1 = e \sqrt{2gh_1}.


ボールが床に落ちるまでの時間を t_1, 跳ね返って最高点に達するまでの時間を t_2 とおくと
h_1 = \frac{1}{2}g t_1^2 より t_1 = \sqrt{\frac{2h_1}{g}}.
v_2 - gt_2 = 0 より t_2 = \frac{v_2}{g} = e \sqrt{\frac{2h_1}{g}}.


最初に跳ね返ったあとの最高点を h_2 とおくと
v_2^2 = 2gh_2 より h_2 = \frac{v_2^2}{2g} = e^2 h_1.


以上により
v_2 = e v_1
t_2 = e t_1
h_2 = e^2 h_1
となります。


あらっ. とっても簡単ですねっ.


というわけで,
n 回目の跳ね返りの直前のボールの速さを v_n, 直後の速さを v_{n+1,
n-1 回目に跳ね返ったあとの最高点を h_n, n 回目に跳ね返ったあとの最高点を h_{n+1,
n-1 回目に跳ね返って最高点に達してから床に落ちるまでの時間を t_n, n 回目に跳ね返って最高点に達するまでの時間を t_{n+1} とおくと


v_{n+1} = e v_n
t_{n+1} = e t_n
h_{n+1} = e^2 h_n


となって, これは等比数列ですっ!


ではでは.
全ての時間を足し合わせてみましょ.
最初に跳ね返ったあとは, 跳ね返って落ちての繰り返しなので, 各 t_n を倍にしたものを加える必要があります.


T = t_1 + 2(t_2 + t_3 + \cdots)
=2(t_1 + t_2 + t_3 + \cdots) - t_1
=2t_1(1 + e + e^2 + \cdots) - t_1
=t_1\{2(1 + e + e^2 + \cdots) - 1\}
=\sqrt{\frac{2h}{g}}\left(\frac{2}{1-e}-1\right)
=\frac{1+e}{1-e}\sqrt{\frac{2h}{g}}


でっす!


何と, 有限時間内に停止するようです.
それでいて, 有限時間内に無限回, 跳ね返っているようです.
現実にはこんなことはあり得ませんが, なかなか面白い結果になりましたね.


ついでに, ボールが停止するまでに動いた距離も求めてみましょ.


H = h_1 + 2(h_2 + h_3 + \cdots)
=2(h_1 + h_2 + h_3 + \cdots) - h_1
=2h_1(1 + e^2 + (e^2)^2 + \cdots) - h_1
=h_1\{2(1 + e^2 + (e^2)^2 + \cdots) - 1\}
=h_1\left(\frac{2}{1-e^2}-1\right)
=\frac{1+e^2}{1-e^2}h


となりました.
これも有限.


こういった物理の問題を解くときにも, 無限級数などの数学の知識が必要になるのですね.